開業助産師への道

お産をとる?とらない? 事業内容を決めよう

開業したら、何をしようと考えていますか?
自分のしたいことを整理して、開業に向けて一歩を踏み出しましょう。

助産師の定義

助産師は、昭和23年に制定された「保健師助産師看護師法」 第3条に、以下のように定義されています。

「厚生労働大臣の免許を受けて、助産又は妊婦、じょく婦若しくは新生児の保健指導を行うことを業とする女子」

つまり、助産師は、お産をする時の支援や、妊娠・出産・産後の女性や赤ちゃんに対して、健康に関する教育・相談を行う専門家です。

そして、助産師は開業できる唯一の看護職でもあります。
その他の看護職である、保健師、看護師、准看護師は、開業することはできません。

ただし、助産師になったばかりの新米助産師が、すぐに開業するのは難しいと思います。
当ブログも、サブタイトルは「0から始める助産師の開業」としていますが、助産師経験ゼロの新米助産師の方に開業を薦めるわけではありません。
経験を積み、自分なりの助産師観をもち、こういう助産師になりたい、という助産師像が見えた先に開業がある方に薦めています。

開業にあたって最も大きな点は、お産をとるのか、とらないのか、ということです。
以下では、分娩を取り扱う助産所と、分娩を取り扱わない助産所、出張専門の助産所について見ていきます。

分娩を取り扱う助産所

助産所開業までの必要経験例数の基準

日本助産師会が示している開業基準によると、

経験年数 5年以上
分娩件数 200件
妊婦健康診査 200例
新生児健診 200例
家庭訪問 30例
母乳相談 200例
産後4週までの健康診査 200例

これに加えて、助産所での研修及び助産所勤務または、院内助産での勤務経験も推奨しています。

分娩を取り扱う助産所のメリット

自分の理想のお産ができる、というのが最大のメリットです。
妊婦に寄り添った健診やお産、妊娠から産後までのケアを自分ができる。
これは、助産師にとって何にも代えがたいメリットだと思います。

病院やクリニックでは、すべてを自分で行うことはできません。
どんなに親身になってかかわった妊婦でも、勤務時間外に生まれることだってあります。
また、病院やクリニックの方針が自分の考えと異なっていても、従わなければなりません。
そこにもどかしさや疑問を感じるほど、「自分でお産がとりたい!」「妊娠から産後まで継続してママにかかわりたい!」と感じるでしょう。

分娩を取り扱う助産所のデメリット

お産をとるとなると、施設や設備を用意する必要があるため、金銭面の負担が大きいです。
また、経営にあたり、出産はいつ起こるか分からないという時間の拘束資金繰りなどの問題もあります。
緊急時の適切な判断医師との連携も不可欠です。
また、自分以外に助産師を雇う必要があるため、という雇用側の知識も必要となります。

メリット・デメリットまとめ
  • 自分の理想のお産ができる
  • 金銭面の負担が大きい
  • 時間の拘束資金繰りなど経営面が大変
  • 緊急時の適切な判断が求められる
  • 雇用側の知識が必要

分娩を取り扱わない助産所

分娩を取り扱わない助産所の開業に関して、日本助産師会は必要経験例数の基準を示していません。所定の手続きを踏めば開業できます。
ただし、助産所はママの口コミや評判がものをいう世界です。
病院やクリニックで、妊婦健康診査、新生児健診、家庭訪問、母乳相談などの経験を積んでから開業する方が、ママとの接し方や相談に対する答え方、様々な疑問への回答に自信がもてるようになり、ママからの評価も高くなるでしょう。

分娩を取り扱わない助産所のメリット

分娩を取り扱う助産所は、建物にかかる初期投資、医療設備や入院設備に伴う初期投資が必要です。多額の借金を負って(あるいは大金を払って)の開業となると、金銭的にも精神的にも負担が大きいです。
分娩を取り扱わない助産所は、医療設備や入院設備に伴う初期投資が必要ありません。そのため、開業への金銭的な負担が少ないことがメリットとして挙げられます。

分娩を取り扱わないため、時間の制約は少なくなります
自分が受け入れたい時間にママを受け入れることが可能です。
プライベートな話をしてしまうと、分娩を取り扱う助産所を開業すると旅行に行くことは難しくなりますが、分娩を取り扱わない助産所なら旅行の計画も立てやすいです。

分娩を取り扱わない助産所のデメリット

分娩を取り扱わないということは、当然ながら分娩はできません
助産師の道を志した時、「赤ちゃんを取り上げたい」という夢を描いて助産師になった方がほとんどだと思います。自分の思い描く分娩をしたいなら、分娩ができない、というのはデメリットだと思います。

ただし、開業した助産所で分娩を扱わなくても、自宅出産の助産をする、分娩を取り扱う他の助産所の補助に行くなど、分娩とかかわり続けることは可能です。
また、近年マイ助産師制度を取り入れたりオープンシステムに登録している病院やクリニックも増えています。助産所で分娩を取り扱わなくても、分娩に携わることは可能になってきています。

また、分娩を取り扱わない分、収入が少なくなります
助産所の空き時間をどのように使うか、マタニティヨガ、ベビーマッサージ等の教室を開いたり、ママやパパ向けの講座を開いたりして、いかに集客をするか考え、行動することが必要です。アイデアと行動力勝負ですね。

メリット・デメリットまとめ
  • 開業への金銭的な負担が少ない
  • 時間の制約が少ない
  • 分娩ができない
  • 収入が少ない

初期投資0円! 出張専門助産所のススメ

出張専門助産所のメリット

開業にあたって、設備だけでなく建物にかかる初期投資がありません。
分娩を取り扱わない助産所でも、建物(あるいは自宅の一室)をきれいにする、ベッドや布団を用意する、といった初期投資が必要です。

出張専門の助産所は建物にかかる初期投資さえも必要ありません。
場所を探したり設備を選んだりする時間も必要ないため、時間的なコストも少なく済み、働きながらでも開業の準備ができます

現在病院やクリニックで働いている場合、退職して完全に開業に働き方をシフトするのではなく、病院やクリニックで(勤務時間や日数を減らして)働きながら開業をして、徐々に開業した助産所に軸足を移していく、という働き方も可能です。

また、開業に伴う手続きが簡単です。
助産所開設届と添付書類を用意すれば開業できます。
敷地や建物の平面図など、建物に関する書類は必要ありません。

  • 初期投資0円といっても、広告やホームページ作成、交通費等の出費はあります。
  • 働きながら開業できるか、勤務先の就業規則を確認してください。

出張専門助産所のデメリット

デメリットとしては、できることが限られる点です。
出張専門で保健指導を行うとき、ママの家に訪問することになります。
家は掃除していないし、自宅に来てもらうのはちょっと……というママにとっては、出張専門の助産所は依頼しづらいですね。

出張専門の助産所をおすすめする理由

開業すると、助産や保健指導の他にもすることはたくさんあります。
健康保険や年金の手続き、助産所のPR活動、ホームページの作成、年度末には確定申告などなど……
初めてのことが多いので、分からないことへの精神的・時間的な負担も大きいです。
出張専門で開業をすると、資金繰りの不安を感じることなく、できることから少しずつ始められます。
開業に関する様々なことに慣れてから、少しずつ手を広げていくこともできます。

開業しただけでは、ママたちは助産所の存在を知りません。
口コミ等で少しずつ知られていくと思いますが、軌道に乗るまで2~3年はかかると言われます。
その間の収入が減るのを最小限に食い止めつつ、開業助産師として働けるのが出張専門の助産所なのです。

メリット・デメリットまとめ
  • 建物にかかる初期投資がない
  • 病院で働きながら開業できる
  • 開業に伴う手続きが簡単
  • 依頼しづらいママもいる

自由な働き方を!

開業してやりたいことは何ですか?
今すぐにはできなくても、将来的にやりたいことは何ですか?

開業助産師として経験を積むことで開ける道もあります。
開業するか、開業しないか。
決めるのは自分自身です。

開業すれば、すべてのことを自分で決めることができます。
病院やクリニック勤務での悩みを、自分で解決することもできます。
それが、開業の醍醐味であり、責任でもあります。

組織に縛られない、自由な働き方です!