助産師の未来

産前産後の継続的なケアを。「マイ助産師制度」を知ろう

ニュージーランドやカナダ等で行われており、日本でも議論が始められている「マイ助産師制度」。
将来の日本の出産システムを大きく変える可能性のある、マイ助産師制度についてまとめました。

「マイ助産師制度」とは

マイ助産師制度のポイントは以下の3つです。

マイ助産師制度とは
  1. 同じ助産師または少人数の助産師チームが、妊娠初期から出産・産後(6ヶ月~1年)のケアを継続して提供することを保証する制度。
  2. 出産場所やリスクの程度に関係なく、すべての妊婦がマイ助産師を選ぶことができ、途中で変更することもできる。
  3. マイ助産師は、整備されたバックアップ体制の下でケアを提供し、状況に合わせて他の助産師や医師・看護師・保健師と協働しながら、ケアを提供する。

現在の日本において、出産のほとんどは病院かクリニックです。病院やクリニックは交代制勤務のため、同じ助産師が継続して妊産婦にかかわることは困難です。
助産所での出産を選べば、特定の助産師による継続したケアを受けることが可能です。しかし、そのような継続したケアを受けて出産する人はほとんどいないのが現状です。

日本における出産の現状

今の日本では、妊婦が助産所や自宅で産みたいと思っても、開業助産師はリスクの高い妊婦を受け入れることはできません。また、助産所には医師がいないため、たとえ助産所や自宅で産むことができても、途中で急変すれば病院に搬送されます。

「助産所って、安心して産めるの?」

この不安を感じる妊婦が多いため、助産所での出産はきわめて少ないのが現状です。
厚生労働省が調査した『人口動態統計(平成30年)によると、平成30年には918400人の赤ちゃんが産まれましたが、このうち助産所で産まれたのが4879人。自宅出産が972人。開業助産師がかかわるお産はわずか1%未満です。

助産師による継続したケアのメリット

妊産婦は様々な不安を抱えています。ホルモンバランスの変化から、精神的に不安定になりやすい時期でもあります。
その不安を受け止め、ケアするのが助産師です。
継続してケアをすることで、妊産婦のうつ病や自殺、虐待を未然に防ぎ、育児への不安を軽減すること、さらには妊産婦が自律して出産・育児ができることが期待されています。
ママのスタートである出産の経験は、産後うつとも密接な関係にあります。出産を肯定的に捉えることができれば、その後の子育てにおいてプラスの影響があると考えられます。

また、助産師が継続してケアをすることは、医療費の削減につながる、という研究もあります。助産師ができることは助産師が担い、人件費の高い医師はリスクの高い場面にのみかかわるように役割分担を明確にすることで、医療費を下げることができます。また、産科医の仕事が軽減されれば、産科医不足の対策にもなります。

マイ助産師は国際的な流れです!

助産師の継続ケアに関する海外の研究

Midwife-led continuity models of care compared with other models of care for women during pregnancy, birth and early parenting(2016)によると、以下のことが明らかとなっています。

助産師の継続ケアは、

  1. 硬膜外麻酔の使用、吸引分娩・鉗子分娩など医療行為が減る
  2. 自然分娩が増加し、帝王切開の出生数に差はない
  3. 早産、胎児・新生児死亡の割合が減る
  4. 助産師の継続ケアによる悪影響はない

したがって、助産師による継続したケアを提供すべき、と結論付けています。

世界保健機構(WHO)のガイドライン

世界保健機関(WHO)は、2018年に『Intrapartum Care for a Positive Childbirth Experience(出産経験を高める分娩ケア)』という勧告を出しています。(勧告は210ページもある大変長いものです)

その中に「WHOの分娩時ケアモデルの概略図」があり、(図は勧告から引用)

出産経験を高めるために必要な「ケアの連続性」として、既知の助産師または既知の助産師の小グループが出産前、分娩中、出生後を通して継続して女性をケアすることが推奨されています。

「マイ助産師制度」実現への課題

世界的に見ても推奨されている、助産師による継続したケア。それを日本でも実現させるためには課題もあります。
マイ助産師制度の実現に向けて活動しているBirth for the Future(BFF)研究会が主催する出産ケア政策会議(ホームページ「ままのね」)は、課題として以下のことを挙げています。

  1. 助産師の実践能⼒の向上
  2. 助産師数の確保
  3. 助産師としての働き方の見直し
  4. 助産師に関する法律の見直し
  5. 医療連携とバックアップ体制の整備
  6. オープンシステムの推進・整備
  7. 専⾨家同⼠の連携・ネットワーク構築

制度として実現するのはすぐには難しいかもしれませんが、オープンシステムを利用するなどして開業助産師が個々に妊産婦の「マイ助産師」として活動することは可能です。
単発の育児相談・ケアにとどまらず、継続してケアができることを謳っていくことが、マイ助産師の認知にもつながります。
一人一人の開業助産師ができることをして実績を積み重ねることが、制度の実現に必要だと思います。

だれがどう考えてもいいことしかない「マイ助産師制度」。
妻もマイ助産師になるべく日々奮闘中です!

『出産ケア政策会議』がまとめた『マイ助産師制度』についてのpdfです。とても分かりやすいのでぜひ一度見てみてください。→pdfはこちら